2015年11月21日土曜日

11/19「いすみオルタナティブ教育勉強会」開催

11/19(木)に行った「第4回いすみオルタナティブ教育勉強会」
いすみっこママが、永久保存級の詳細レポートを書いてくれました!読み応えたっぷりです、ぜひどうぞ^ ^
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八ヶ岳サドベリースクールスタッフ 木村 聡さんをお迎えして

サドベリースクールについての概要に始まり、現場でのエピソードやご自身の体験、4人のお子さんの子育てについて、所々、参加者からの質問にも答える形で色々お話しいただきました。


●サドベリースクールとは?
ボストンにあるサドベリー・バレー・スクールに共感し、同じ理念の下で運営する学校。
人にはそもそも好奇心があり、自ら学びたいと思った時によく学ぶ。
基本的には何も教えない方針。
ニューイングランドのタウンミーティングを参考に、学校の事は皆で話し合いをして決めている。大人も子どもも対等な立場。
現在、日本国内では8校のサドベリースクールがある。

●木村さんの自己紹介
父が東大卒のサラリーマンの家庭で育つ。親からは折に触れて、いい大学を出ればいい会社に就職出来、生活も安定すると言われていた。中三の時、進学塾へ通い、進学校の高校に合格する。高校へ入ってからは遊んで過ごし、受験に失敗。浪人生になってからは、東大合格を目標に1年間みっちり勉強し、見事東大に合格する。いざ東大に入学してみると、勉強がつまらなくなり、ラグビーに夢中になる生活に。留年の後卒業。卒業後はメーカーに就職するも、1年が精一杯で退職。自分が何をしたいのか判らなくなり、家に引きこもるようになる。この時の経験が後にサドベリースクールを立ち上げるきっかけになる。

●サドベリースクールを始めようと思ったきっかけ
自分が家にひきこもっていた時、レールから外れた感が強く、外出する事も出来ずに家でパソコンに向かう日々を過ごしていた。仕事もせずに家にいて、ご飯を食べて、穀潰ししているだけなら自分はいない方がましなのではないか?と悩み、相談に乗ってもらったのが現在の奥さん。

やがて結婚のため、再び企業に就職するも、このままでいいのだろうかと考えるようになる。そんなとき出会った本が大前研一の「やりたいことは全部やれ!」そして、大前研一氏が創設した一新塾へ入る。一新塾で多くの人と議論する中で、世の中をよくしていこうと思うと、教育が問題であると叫ばれていた。ラグビーや家庭教師をやっていた経験もある事から、理想の教育について探求するようになる。
2006年、一新塾に来ていた大学生に、サドベリー・バレー・スクールという理想の学校があると教えられる。
2007年サドベリー・バレー・スクールを視察。生徒数は200名あまり、敷地面積は10000㎡という規模に圧倒される。その後、姫路にある、まっくろくろすけというサドベリースクールの研修に参加すると、古民家で30人ほどの子ども達が自由に過ごす様を見て、この規模なら自分にも出来そうと確信を持つ。
2008年自宅を開放して湘南サドベリースクールを立ち上げる。

リン ツイストの言葉に「世の中には問われる事の無い常識がある」というのがある。子どもは7歳になると小学校へ通うようになるが、これは真実なのか?
小学校に通う子ども達は夏休みになると喜んでいるが、夏休みが喜びなら、学校は本当なら行きたくない場なのではないか?
サドベリースクールに通う子は休日を大して喜ばない。むしろ休みでもサドベリースクールに行きたいとなる。

子どもには将来やりたい事がわかる大人になって欲しい。やるべき事に追われる毎日を過ごしていると、何がしたいかわからなくなる。サドベリースクールでは、やりたい事をベースにやっていく。

●サドベリースクールの1
1日中休み時間の学校。子ども達は1日中好きなことをして過ごす。ゲームをしたり、パソコンに向かったり、勉強したり、何もせず、退屈に過ごすこともある。
たいくつだー!と困っている子がいることもあるが、退屈な時間こそ、自分が本当にやりたい事を見つけるための時間であると、見守っている。

掃除の時間を定めて自分たちで掃除もする学校もあれば、掃除は、お金を払ってやってもらっている学校もある。すべては子どもと大人の話し合いで決めている。
ゲームも禁止しない。子ども達は面白いゲームを見つけてきてはずっと取り組んでいる。ゲーム、TVYoutube等をずっと見ていることもある。
何ヶ月かすると見守っている大人も心配したりもするが、何年もやっている。
ゲーム等を与えない主義ならその方針でも良いが、不安に思っても見守るという覚悟も必要。

●読み書き
パソコンの使い方は、教えなくともどんどんマスターしていく子が多いが、鉛筆で何かを書く機会は少なく、字の書き方を覚えるのには苦労している子が多い。本人が、必要だと思えば自然と覚えるし、慣れていくもの。
自分の子供たちを見ていると、長男はポケモンが好きで、ポケモン図鑑を読みながら字を覚えた。次男は、知りたいことがあるとすぐに長男が教えてくれたりすることが多かったので、活字に接する機会も少なく、しばらく字が読めなかった。自分でカードゲームを始めてから字を読めるようになった。長女は、もともと本が好きで、ハリーポッターなどを読書するうちに字を覚えた。三男はゲームで字を覚えている。

サドベリースクールに通う子どもたちは、小学校には行っていないが、日本語は話せる。学校に行っていると、授業の中では、主に先生の話を聞くことが中心だが、サドベリースクールでは、コミュニケーションを常に取れないといけない。大人や年長者ともよく話をする機会があるので、コミュニケーションに長けた子が多い。

●学校選び
サドベリースクールを立ち上げ、自分の子どもたちには、サドベリースクールと小学校とどちらに通いたいか、本人に選ばせた。自分の子ども達は、サドベリースクールを選んだが、立ち上げ当初中心となったもうひと家族の子どもは、小学校で授業を受けるのがとても楽しかったと、小学校を選んだ。子どもは、親の影響を受けるものだが、自分の意思で選ばせることも大事。

●マインクラフト
サドベリースクールの子ども達に人気の遊びに、マインクラフトというPCの世界の中でのレゴのようなゲームがある。木を伐りだすところから初めて、色々なものを作っていき、自由にカスタマイズする。先日、自分の勤めるサドベリースクールの子ども二人がマインクラフトの大会に出場した。チームで戦い、勝利して、勝利の雄叫びをあげ喜ぶ姿を見て、かつて自分が学生時代にサッカーやラグビーで勝利した時の感動と同じような事をゲームをすることで味わっているのだと思った。

●子ども達に何かを与える基準は?
子ども達は、テレビのCMなどからゲームに興味を持っている。ゲームは子どもが自分で見つけて気に入ったものを、お年玉で購入している。パソコンは現代において必需品と考えているので、購入に際しては親が補助している。
遊びもゲームも、勉強も一緒の事と考えている。その子が必要としているものが大事。何かに打ち込んだ原体験が、将来生きてくる。

●運動
一戸建てのような場所を利用したスクールでは、目の前に広場もなければ、一緒に遊ぶ相手も少なく、運動が中々できないのが悩み。
姫路のまっくろくろすけというサドベリースクールの子ども達は、お昼を食べた後は、目の前にある広場に出て、鬼ごっこやサッカーをやって、外で動き回って過ごしている。体も思いっきり動かせるような環境も大事。
自分の上二人の子ども達も、中学生になり運動もしたい年頃。家からは電車で2時間かかるが、広いグラウンドもあるフリースクールの中学校に通い始めた。ちょっとした授業のようなものもある学校で、子どもたちは字も書くようになった。自分で必要だと思うと、どんどん上達していく。

●ひきこもりの子ども
ある子どもは自宅に引きこもっていた一年間、毎日、ソファーの上で寝袋に入りミノムシ状態で過ごしていた。後々、その子は、親にその状態を見守ってもらえた事で、自己肯定感が育まれ、今では普通に仕事もできるようになった。
あるフリースクールでは、学校にくるとすぐにクローゼットの中に隠れてしまう子がいた。外の様子を伺うだけの毎日が一年間続いたが、その子はクローゼットに隠れて先生は信頼できる人なのかを見極めていた。
変化のない状態が続いていると、親は何を学んでいるのかと心配になるが、ひたすら見守り続けることで、子どもの自己肯定感が高まってくる。

●日本の学校制度の変遷
子どもは、学校へ通い学ぶものというのが当たり前の事になってきたのは、ここ40年くらいの事。日本で、学校制度が定められたのは1872年。始めは
学校が作られても、通っていたのはほんの一部の子どものみで、農家の子ども等は、家の手伝いをしていた。学校を造るために税金も取られるし、労働力も取られてしまうと、親たちは、積極的に学校に行かせることはしていなかった。
やがて、ほとんどの子どもが当たり前に学校に通うようになり、現代では、学校に行けない子どもがどんどん増えてきている。

●サドベリースクールでのスタッフの役割
 スタッフは、スクールの運営と子どもの見守りをしている。
ホームページを作ったり、経理をしたり、問い合わせに対応したり、事務仕事をしたりする。また、子ども達に何か頼まれたら出来る範囲で対応する。勉強を教えて欲しいと頼まれたら、教えることもあるが、小学校などの教員とは違い、勉強を教えるプロではない。子ども達の間でいざこざがあれば、対応したりもするが大人が裁くと、遺恨が残ることが多い。子ども同士で解決するほうが、あっさり解決する。

●勉強への取り組み
サドベリースクールの子ども達は、自分のペースで勉強をする。大人から教える事は無い。
モンテッソーリ教育で言う敏感期の子どものように、自分でやりたい事を見つけたら集中してずっと取り組める。
嫌いな事は、一夜漬けで必死で勉強してもすぐに忘れてしまうが、興味を持って学んだ事は一生ものである。

何かについて無性に学びたい意欲が湧くと集中力を発揮して、3学年分の数学の勉強を僅か3か月で終わらせてしまう子もいた。
 
●サドベリースクールの立ち上げ方
まずは、やると決める。
サドベリースクールを作ると告知する。興味を持った人が集まってきてくれる。
設立ミーティングを開く。ミーティングを重ねて、大人も子どもも、皆でよく話し合う。

●ホームスクーリングとサドベリースクールの違い
家で学びたい子もいる。家で学ぶ場合、他人との会話が少ないかもしれない。
スクールでは仲間たちがいる。家に居るよりも、親の目がない分、スクールに行ったほうが、子どもがのびのび過ごしているように思う。

●サドベリースクール卒業後
将来の目標を見つけた子ども達は、限られた時間で、勉強し、大検に合格し、さらに希望の進学先へと進んでいる。進学後、一般的な教育を経て来た普通の子に出会い、あまりにもやりたい事をやっていない子が多いことに驚いたという報告をしてくるサドベリースクール卒業生もいた。

企業に勤める割合は低いが、入った場合は、マネージャーなど、人をまとめる立場になる割合は高い。
芸術、研究、福祉関係の仕事に就くことが多い。シュタイナー教育を受けた子ども達と似たような傾向にある。
料理人やパティシエ、農的暮らしや、自転車で日本一周しているような卒業生もいる。

●サドベリースクールを名乗る根拠
1、    特定のカリキュラムは無い
2、    子どもと大人は対等の立場である
3、    人事や予算も全ては子どもと大人で話し合う

●最低限のルール
色々なスクールがあるが初めは何も決まっていない。 
・全ては話し合いで決めるので、定期的にミーティングを開く。
子どもから、決まった時間にミーティングを開きたいと提案があった。
・食事はそれぞれ食べたいときに食べる。夢中になって食べ忘れる子もいて、時々親からクレームが入る。
・時間を決めて掃除する。本当に汚くて困ったことがあり、大人から提案した。
・本当にやめて欲しいことがあったらやめる。嫌なことをされた時、本当にやめて!と相手が言ったらやめるというルール。
・スクールの外は、車が通っているので子どもだけで外出しない。
外出については、どこまでは行ってよいのか親も交えて書類を交わし、必要があればスタッフが同行する。

自分の事が自分でできる4歳ぐらいの子どもから受け入れているサドベリースクールが多い。
卒業は、退会手続きを経れば卒業という事になるが、子どもによっては、卒業のプロセスを自分で考え演出する子もいる。

●学費 
日本では普通の学校に通う子ども1人当たり1年間で約100万円の税金が使われている。
サドベリースクールでは1か月40000円前後の学費+入学金というのが一般的
サドベリースクールやフリースクールでは、スタッフは低い給料で働いているのが現状。
現在、国会でフリースクール支援法の法制化が審議されており、2018年から国からの支援が始まるかもしれないので、今後、サドベリースクールの立ち上げを考えるなら、NPOなどの法人格があった方が補助金なども受けやすい可能性がある。

●サドベリースクールに通わせる上での心構え
 公立の学校に通っていないことで虐待を疑われる事もあるので、子どもに会いたいと言われたら歓迎する。
 サドベリースクールやフリースクールが増えている今は時代の変わり目と認識し、人の目をあまり気にしない。

近年、学校は国がつくってきた。しかし、それ以前に、日本には寺子屋文化があった。寺子屋のような学びの場を自分達で作り、やりたい子は進み、やりたくない子は遊んでいるというのも良いのではないか。
 多様な時代を生きていく今、子どもも多様な生き方を選んでいけて幸せなのではないか。



akkoß




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